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コラム

ヒーラーが無責任なポジティブ思考を押し付ける危険性

はじめに

「自分のやりたいことをだれにも遠慮せずやりきって、人生を好き勝手にぶっちぎっちゃえばいい」という極端なポジティブ思考を、人々に無責任に押し付けるヒーラーがいます。
特に、社会経験が浅いままヒーリングを学び、インストラクター資格を取得した人々がやりがちです。
しかし、このようなアドバイスは、多くの場合、現実的な問題を無視したものになりがちで、結果として他人の人生を混乱させることにもつながります。

本記事では、無責任なポジティブ思考の押し付けがどのように問題を引き起こすのか、そしてなぜ慎重になるべきなのかを、心理学や社会学の観点も交えて解説します。


ヒーリング業界にありがちな「啓蒙家幻想」

一部のヒーラーは、ヒーリングを学び始めると、いつのまにか「自分が民衆に教えをもたらす啓蒙家である」と錯覚する傾向があります。特に、

  • まともな社会経験のないままヒーリングの資格を取得した人
  • 自身の過去の苦しみやトラウマをヒーリングで克服したと信じ、それを普遍的な成功例として語る人
  • 少年漫画やスピリチュアルな世界観に影響を受けすぎた人

こうした人々は、「自分が気づいたのだから、他人も気づけば幸せになれる」と単純化して考えがちです。
しかし、現実には、人の悩みや課題は一人ひとり異なり、単純な「気づき」だけで解決するものではありません。


ポジティブ思考至上主義の落とし穴

「ドーンとやっちゃいなさいよ!」
「ブロックがあるなら取ればいい!」
といった明るく元気でポジティブ思考のアドバイスは、一見、前向きで力強いものに思えます。しかし、これは以下のような理由で非常に危険です。

1. 現実的なリスクを無視している

ポジティブ思考そのものは悪いものではありませんが、現実的な制約を無視するのは問題です。

例えば、

  • 会社を辞めて起業する際には、経済的なリスクを考える必要がある
  • 家族の事情や法的な制約によって自由に行動できない人もいる
  • 衝動的に行動することで人間関係が破綻する可能性がある

「やりたいことをやれ!」というアドバイスは、こうした現実的な要因を無視した無責任なものになりがちです。

2. 「心理ブロック」が原因とは限らない

ヒーラーの中には、慎重に行動する人を「心理ブロックがあるからできない」と決めつける人がいます。しかし、人が行動をためらう理由は心理的な問題だけではありません。

  • 家族を養う責任があるから慎重になっている
  • 経験や情報が不足しているため、まず準備を整えようとしている
  • 社会的な影響を考慮して行動を決めている

こうした理由を無視して、「ブロックを外せば何でもできる」と押し付けるのは、むしろ無責任なアプローチと言えます。

3. 成功体験の押し付けは逆効果

よくあるのが、「私もかつては悩んでいたけれど、この方法で人生が変わった!」という個人的な成功体験を押し付けるパターンです。しかし、成功体験は個人の状況によって異なり、他人にそのまま当てはまるとは限りません。

心理学の研究でも、「成功者バイアス」(survivorship bias)という現象が指摘されています。これは、成功した人の話ばかりが目立ち、失敗した人の話が見えにくくなる現象です。成功者の話を鵜呑みにして同じ行動を取ると、思わぬ失敗を招く可能性があります。


では、どのようなアドバイスが適切なのか?

では、無責任なポジティブ思考ではなく、どのようなアプローチが求められるのでしょうか?

1. 相手の状況を深く理解する

一律に「やりたいことをやれ!」と言うのではなく、

  • その人の置かれた状況
  • 経済的・社会的な制約
  • 過去の経験や価値観

をしっかりヒアリングし、現実的な選択肢を提案することが重要です。

2. ポジティブ思考と現実的な計画をバランスよく

ポジティブな考え方は大切ですが、それだけで人生がうまくいくわけではありません。リスク管理をしながら計画的に行動することが、より確実な成功につながります。

例えば、「転職したい」と相談されたら、

✅ まずは副業で試してみる

✅ スキルを磨いてから転職活動を始める

✅ 現職と並行しながら次のキャリアを計画する

といった、現実的な方法を一緒に考えることが大切です。

3. 「できない理由」も尊重する

人にはそれぞれ「やらない理由」があり、それが必ずしもネガティブなものとは限りません。無理に変えようとするのではなく、「今はこの選択がベストなのかもしれない」と受け入れる姿勢も大切です。


まとめ

「やりたいことをやれ!」
「思考のブロックを外せば何でもできる!」
といった無責任なポジティブ思考の押し付けは、むしろ他人を混乱させ、時には危険な状況を生み出します。ヒーリングや自己啓発を学ぶ人こそ、現実的な視点を持ち、慎重で責任あるアドバイスをすることが求められます。

大切なのは、ポジティブ思考を無理に押し付けるのではなく、個々の事情に寄り添いながら、現実的な方法を一緒に考えることです。それが本当の意味で人を助けるヒーリングのあり方ではないでしょうか。

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